マタニティ&ベビーの温泉入浴について

赤ちゃんと温泉 column
赤ちゃんと温泉を楽しむならやさしい泉質を選びましょう

妊娠中の温泉入浴や、小さな赤ちゃんを連れて温泉に行くとき、どんなことに注意したらいいでしょうか。マタニティ&ベビーの温泉入浴について、温泉ソムリエテキストに寄稿している内容を抜粋してご紹介します。

私自身の妊娠、出産経験を基に、妊婦と赤ちゃんの温泉入浴について様々な媒体で発表してきました。それらの内容を「マタニティ&ベビーの温泉入浴について」としてまとめ、マタニティ温泉研究家として温泉ソムリエテキストに寄稿しています。主な内容は、妊娠中の温泉入浴で気をつけるポイント4つ、赤ちゃんと楽しむ温泉を選ぶときのポイント4つです。

妊娠中の温泉入浴で気をつけるポイント

2014年の温泉法改定により、それまで長く禁忌とされてきた「妊娠中(とくに初期と末期)の項目が削除されてからも、「妊娠中は温泉に入浴していいのか不安」という声を多く聞きます。同じように、赤ちゃんの温泉入浴についてもよく質問をいただきます。妊娠中の妊婦さんも赤ちゃんも、思う存分温泉入浴を楽しめます。ただし、注意するポイントがあります。

泉質に注意

例えば、刺激の強い泉質に注意しましょう。妊娠中は疲れやすいため、湯疲れなどを起こしにくい泉質を選ぶようにしましょう。また、炭酸水素塩泉や高アルカリ温泉など、ツルツルと滑りやすい泉質の温泉では、足元に注意が必要です。

熱い湯を避け長湯しない

熱い湯に入浴することは、激しい運動をすることと同じです。ぬるめの湯で体力を消耗しない入浴を心がけましょう。また、妊娠中は血液量が多くなり高血圧になりがちなことや、お腹の赤ちゃんへ血液を送るため貧血になりやすいことから、ほてりやのぼせ、めまいやふらつきなどが起こりやすい可能性があります。長湯などのぼせの原因となることは避けましょう。

鮮度の良い温泉を選ぶ

人の少ないところ、鮮度のよい温泉を選びましょう。妊娠中は母体の免疫機能が低下します。感染症にかかりやすくなることから、人が多い場所を避ける必要があることはもちろん、新鮮なお湯で感染症リスクを減らしましょう。

安心して利用できる施設を選ぶ

妊娠中は足元が見えにくいことから、転倒の危険が高い時期です。階段が多い施設や移動が困難な施設は避けたほうが無難です。また、妊婦さんを歓迎してくださる施設を選ぶようにしましょう。心配な場合は、施設に直接問い合わせてみることをおすすめします。

赤ちゃんの温泉入浴で気をつけるポイント

赤ちゃんが温泉に入ってはいけないという決まりはありません。生まれたばかりの赤ちゃんは、肌も抵抗力も弱いことから、最初の1か月はベビーバスを使うように、と病院や保健所で指導されます。1か月を過ぎてやっと家庭のお風呂に入れることを考えると、公共の入浴施設に入れるようになるにはもう少し時間が必要なのかな、という考え方もあると言えます。

ただし、温泉ソムリエの家元、遠間さんによれば「温泉地の赤ちゃんは、生まれたときから温泉に入っていますよ」とのこと。だから問題なのは「温泉」ではなく、湯の衛生状態であると考えられます。とすれば、利用者が多い公共の湯を避ければ、赤ちゃんの温泉入浴をそれほど怖がる必要はありません。

ただし、赤ちゃんの体力には個人差がありますので、心配なうちは温泉を控えましょう。体調がすぐれないときや、機嫌が悪い時なども無理をさせないようにしましょう。

やさしい泉質を選ぶ

大人でも肌が負けてしまうような刺激の強いお湯は赤ちゃんには向きません。溶存物質の少ない単純温泉の中でも、硫黄泉や酸性泉、放射能泉は湯あたりしやすいとされています。赤ちゃんには避けたほうが無難です。やさしい泉質でかけ流しの温泉であっても、赤ちゃんのうちは湯上り時に、シャワーで洗い流したほうが無難です。肌の弱い我が家の息子は、やさしい塩化物泉のかけ流しでも、湯上がり後に肌がかゆくなり炎症を起こすことがよくありました。

ぬるゆが基本

赤ちゃんの心地よい温度は、体温より少し高い程度の「ぬるゆ」です。38℃から40℃程度のぬるめの温度で楽しめる温泉を探してみてください。また、硫黄泉など泉質による刺激で、お湯の温度よりも体感温度が高く感じる場合があります。熱い湯を嫌がるお子さんには注意しましょう。

鮮度の良い湯を選ぶ

赤ちゃんは免疫を獲得するまで抵抗力が弱いので、感染症などに注意が必要です。多くの人が集まる施設は避け、貸切風呂などがある施設を選ぶと安心です。肌がめっぽう弱い息子は、循環式で塩素が強めの施設の場合、塩素で肌がかゆくなったり炎症を起こしたりすることがありました。

安心して利用できる施設を選ぶ

自力で座ることができない赤ちゃんの場合、脱衣所にベビーベッド、風呂場にベビーチェアがないと、入浴するときにとても苦労します。また、「おむつのとれていない子どもの入浴は不可」とする大浴場もありますので、選ぶときに注意してください。シャンプーやボディソープなども、赤ちゃん用が用意されていると安心です。ほかにも、離乳食やおむつ用ゴミ箱など、赤ちゃん向けサービスがあるところを選ぶと、赤ちゃんを連れての温泉旅もストレスなく過ごすことができます。

妊娠中も、赤ちゃんも、温泉を楽しむために

妊娠中も温泉を楽しみたい、赤ちゃんと一緒に温泉を楽しみたい、という方には、思いっきり温泉を楽しんでほしいと思っています。ただし、妊娠や赤ちゃんのことについて、あまり理解がない人が多いのも事実。周りの人は、妊婦さんの大きなおなかや、あまりに小さすぎる赤ちゃんを見ると心配になり、「妊娠中の温泉入浴は危険では?」とか「赤ちゃんが泣いていてかわいそう」などと思ってしまうこともあるのです。貸切風呂などで、人目を気にせず楽しむことは、この時期ならではの贅沢な楽しみかたのひとつです。

また、宿の方がすべて、妊婦さんや赤ちゃんに理解があるとは限りません。この時期に温泉旅行に行くなら、妊婦さんや赤ちゃんを応援している、歓迎している宿を選ぶようにしましょう。探してみるとたくさんありますよ。